「行政のための指定管理者制度からお客様のための指定管理者制度」に生まれ変わる事が周防大島町の発展につながる
2013/01/21
みなさまに重要なご報告をさせて頂きます。現在、サザンセトなぎさパーク(なぎさ水族館、陸奥記念館、陸奥キャンプ場)の指定管理者を弊社、大野工業株式会社は、平成25年3月31日をもち終了し、平成25年4月1日からはNPO法人周防大島海業研究会(事務所:周防大島町西方)が指定管理者となり管理運営を開始します。NPO法人の役員の中に、なぎさ水族館創設者である柳居俊学氏と廣崎芳次氏がいるので、なぎさ水族館の管理運営は飛躍的に向上するのではないかと想像していますが、廣崎芳次氏が経営する株式会社野生水族繁殖センターは、なぎさ水族館の飼育管理業務を指定管理者から再委託されなければならない特定業者ですので、次期、指定管理者となるNPO法人海業研究会の副理事長に廣崎芳次氏がいる事は不思議に感じます。
今回の指定管理者選定の審査結果は上記の通りですが、A団体が周防大島海業研究会、B団体が大野工業です。審査員4人で合計600点満点中、周防大島海業研究会が415点、大野工業が258点で157点差がついています。両社の要望した年間の指定管理料は満額630万円ですし、弊社はこれまで3年間、集客を伸ばしお客様の満足度も向上できたと感じていますし、周防大島町が実施したモニタリング(管理運営状況評価)では「全般的に良好に管理運営されている。」という評価となっていますので、157点差という大差となってしまった事を悔しく思うと同時に、自分自身を不甲斐なく思っています。実は、この審査結果で、大野工業は公募要件に合わないために、審査対象にすらならなかったため「第二位順位者とならない」とコメントされています。周防大島町の公募要件では、最低限の維持管理は出来ますが、新たな企画やサービス・集客・顧客満足向上からの施設発展のためには指定管理者が持ち出す必要があるため、公募要件の変更も申請に入っていたのですが、結果、その部分が周防大島町と弊社とで折り合いがつかなかったのだと思います。
ここからは、サザンセトなぎさパーク(なぎさ水族館、陸奥記念館、陸奥キャンプ場)の指定管理者の募集要項そのものについての、個人的な見解を述べさせて頂きます。ここに述べさせて頂く事は全てこれまで周防大島町へ要望・提案して来た事ですが、多くは実現に至っていません。
結論、現在の「施設の設置目的」を指定管理者が実現するためには、募集要項、規約、施設・備品の老朽化改善、条例等を見直し赤字経営施設から黒字経営施設にならなければならないのです。指定管理者制度を周防大島町自身が「生かさず殺さず」という認識のままでは、発展は不可能ではと考えています。
具体的には、
<陸奥記念館の「施設の設置目的」>
旧海軍の戦艦陸奥の引き揚げ部品ほか、乗組員の遺品や遺族から寄せられた資料等を保存展示し、殉難将兵の冥福を祈るとともに戦争の悲惨さを後世に伝え、恒久平和を願うため設置したもの。広く住民の健全な利用に供し、その教養、調査研究、レクリェーション等に資することを目的 とする。
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まず、資料等を保存展示する役割が周防大島町なのか指定管理者なのか明確なルールがありませんし、それを行うためには、専門的知見を有する博物館学芸員が必要ですが、指定管理者にはその人件費を捻出する余裕は経営上ありません。なので、陸奥記念館は博物館に類する施設ではありますが、立派な収蔵庫となっているように思います。もちろん調査研究も不可能ですし、集客を図るための有効手段である企画展を定期的に開催する事も経営上は非常に難しいです。ただ、平成24年は陸奥記念館開館40周年であったため特別企画展を弊社で実施させて頂きました。それに関して公募型の周防大島町助成金を頂いていますが50万円以上の持ち出しとなっています。現状では、年々、戦争の悲惨さを後世に伝えられる人数が減らざるを得ません。
<陸奥野営場の「施設の設置目的」>
野営場等林間休養施設として住民や都市生活者等に休養の場を提供し、自然保護意識の啓発や地域間交流の促進、レクリェーション活動の振興等に資することを目的とする。
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まず、野営場という施設名が運営上不適切なので陸奥キャンプ場という名称が使えるように周防大島町へ申請し許可を得ています。住民や都市生活者等に休養の場を提供するひとつの改善として、周防大島町への指定管理者の提案で、トイレに洋式トイレを設置して頂きました。地域間交流の促進、レクリェーション活動の振興等のために、スマートバーベキュー(日本バーベキュー協会認定)を取り入れ、バーベキュー検定者を50人以上養成しバーベキュー事業を展開した事により、前管理者と比較し7倍以上の売上となりましたが、一人一泊310円という料金設定では、キャンプ場管理人の人件費を捻出する事も難しい状況です。更には、隣接する海水浴場と飛び地にある展望台と遊歩道の管理も含まれているため、非収益施設ばかりで管理に力を入れるほど、経営を圧迫するという矛盾に陥っています。
<なぎさ水族館の「施設の設置目的」>
水族館は、豊かな海と水産資源に囲まれた本町の地域特性を活かし、海辺に面した地で瀬戸内海の水生生物を飼育・展示している。その名のとおり、渚をイメージしたタ ッチングプールを備え、素足で入り、近海に住む海辺の生物に直に触れて遊べる体験型の観光施設として、隣接する 陸奥野営場とともに、住民や都市生活者等に安らぎの場を提供し、水産資源の活用による社会教育の振興とレクリェ ーション等に資することを目的とする。
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平成2年にオープンし、開館22年が経過する日本一ちいさな水族館は、弊社が管理運営を始めてから来館者数は1.5倍以上となり現在、年間2万人以上のお客様がご来館されています。ただ、22年前と同じ体験施設のままではこれ以上の集客は簡単ではなく、入館料大人210円・こども100円、定休日なし、飼育管理業務を年間600万円(年間売上と同等)で野生水族繁殖センターに再委託しなければならない等というルールのままでは、年間数百万円の赤字となり広告宣伝費や企画展費を捻出するのは困難な状況です。ニホンアワサンゴ等の水産資源の活用による社会教育の振興等にはまだまだ大きな可能性がありますが、野生水族繁殖センターと指定管理者が取り交わす委託契約書の内容が管理運営に不適切なため、内容の協議を要望しても野生水族繁殖センターは拒否し、周防大島町は双方に中立となるために問題に介入しないため、来館者は増えても経営は改善されない施設となっています。
さて、このような状況に置かれた公共施設の新しい指定管理者となる、周防大島海業研究会はどのように管理運営を行うのか、手腕に注目したい所ですが、弊社としては、サザンセトなぎさパークから巣立つ前にみなさんにお伝えしなければなりません。
限界集落となりつつある、ふるさと油田地区再生のため、周防大島町の交流人口100万人達成に寄与するため、町長の最重要政策である交流から定住を促進する雇用の受け皿を拡大するために指定管理者となり3年間走って来ましたし、次の指定管理者になるためには、募集要項、規約、施設・備品の老朽化改善、条例等を見直し赤字経営施設から黒字経営施設にならなければならないと考え提案と要望を続けて来ました。
指定管理者制度を周防大島町が「生かさず殺さず」という認識のままでは、公共施設の発展と地域再生は不可能だと考えています。これから限界集落が増え続ける周防大島町に「起業」以外で雇用を創出するためには、売上と雇用の基盤がある指定管理者施設をてこ入れ(リニューアル等)し、ビジネスモデルを進化させ雇用を拡大する政策が必要だと考えます。ただ、自主財源が25%程度の周防大島町がそれを単独事業で実施する事は難しい事と、行政主導による施設整備の弊害を考えると、民間資金と民間手法による公共施設整備と公共サービスの提供が可能なPFIを導入してみてはいかがかと、二年前から選定委員会まで提案させて頂きました。
「行政のための指定管理者制度からお客様のための指定管理者制度」に生まれ変わる事が、周防大島町の発展につながると信じています。
3月31日以降は、指定管理者としてはサザンセトなぎさパークに関わる事は出来ませんが、町民として、島おこしを志す者として、これから注目させて頂きますし、選定委員会からの評価には「B団体(大野工業)については、現在まで立派な活動を行っており、その点について町は深く感謝すべき団 体である。しかしながら、町の主旨に沿わない事業展開を計画しており、今回の申請に関して、 募集の要件に合わない提案であった。このため交渉権者となり得ない結果となったことは非常に残念である。」というコメントもあります。真価が問われるのはこれからです。
最後に、弊社が選定委員会で行ったプレゼンテーションスライドを以下に展開しますが、サザンセトなぎさパークをリニューアルし限界集落の再生、そして周防大島町の発展に寄与できる日が、いつの日か訪れると今でも信じています。その日が来る時に、この僕の想いに共感して頂けるように、そして、あの頃から大野圭司は本気で考え動いていたという事を証明するために、この記事を投稿させて頂きました。最後まで読んで頂き誠にありがとうございました。
全部で33スライドありますので、続きは以下のPDFでご覧ください。
この記事の参考資料です。
・周防大島町陸奥野営場等の指定管理者の選定に関わる報告書(PDF)
・周防大島町立陸奥記念館、周防大島町陸奥野営場、周防大島町なぎさ水族館 指定管理者募集要項(PDF)
・大野工業株式会社の選定委員会でのプレゼンテーション(PDF)